2019年12月5日木曜日

清里旅行②

清里旅行その1のつづきです。

午後は、すぐにでもターシャ・ミュージアムに行きたいところでしたが、行った日は木曜日で休館日。
事前に調べてわかっていたので、ターシャ・ミュージアムには翌金曜日の朝一で行くことにしていました。 

清里には他にもミュージアムがいろいろあるので、「黒井健絵本ハウス」と「えほんミュージアム清里」を訪ねました。

「ポーセリン・ミュージアム」を希望した方がいらっしゃったので車でそこまで行ってはみたものの、なぜか閉まっていました。ネットでは休館日にはなっていなかったのですが、電話してみても誰も出ず…。ちょっと不親切ですよね。

行ってみようか、と話していた「清里牧場通りアンティーク」というお店も、もしかして、という不安にかられ、ネットで調べてみましたら、「今年度の営業は終了しました」とブログに書いてあったので、無駄足にならずにすみました。
観光シーズンを外れて行く時は(清里は9月までが観光シーズンのようです)、よくよく調べて、時には電話で確認してから行ったほうがいいねと、みんなで話しました。 


 
こちらが「黒井健 絵本ハウス」です。 
絵本作家であり、イラストレーターでもある黒井健さんによる私設美術館。
黒井さんが手がけた絵本の絵はきっとだれもが、一度は目にした、読んだことがあるに違いありません。
特に知られているのは新見南吉の『ごんぎつね』『手ぶくろを買いに』の絵ですね。 


 
美術館入った入り口には、ごんぎつねを描いたオブジェが飾ってありました!
ごんぎつねモチーフは他にもありましたよ♪♪ 

絵本を見てもわかる繊細なタッチと、あたたかな色使いは、やはり原画で見るのと印刷とでは、まったく違います。

絵本だけでなく、風景画など、さまざまなジャンルの絵を見ることができました。
何を描くにしろ、描く対象に対する黒井さんのやさしさや思いが伝わってきて、心がほのぼのしてきます。 


こちらは撮影オーケーの、二階の読書室。椅子に座って、ゆっくり絵本を読む時間を持てます。 


ポストカードと、手ぶくろを買いに、のイラストが描かれた一筆箋を買ってきました。 


 
次に行った(道を横切って数分で到着)「えほんミュージアム清里」は、黒井健 絵本ハウスとのお得な共通券があり、もちろん、それを利用しましたよ。
天気はだんだん悪くなり、このミュージアムを出る頃には雨となってしまいました( ;∀;) 




 
雨になったのは残念ですが、秋の花がきれいに咲いていて、紅葉も始まって、しっとりした雰囲気を味わえました。高原なのでかなり寒かったですが…(^▽^;) 

えほんミュージアム清里は、国内外の絵本の原画を展示する絵本美術館で、常設展はイギリスの絵本作家エロール・ル・カインの作品。
絵本原画、スケッチ、アニメーション画、初版本など、200点を超える世界でも屈指のカインのコレクションだそうです。
常設展は二階で、一階は企画展をやっていました。 


 
私たちが行った時の企画展は「絵本と詩画集から 米倉健史キルティングアート アンソロジー」(上写真の右がそのチラシ)でした。
布で描くイラストレーション「キルティングアート」作家、米倉健史さんの、キルティングアート作品の展示でした。

これは布の作品なので写真撮影されて印刷本に使われます。
印刷された写真では、実物の壮大さや繊細さが伝わらないなあ、と、つくづく残念に思いました。
布で作った作品であるがゆえに、実物をまじかで見た時の、その卓越した細かな技術や迫力は、言葉にできません。 

布で絵を描く――それもアップリケではなく、キルティング。
しかも、細かい!
しかも、絵具ではないので、色のグラデーションをつけるのも布でやらなくてはならず、微妙なグラデーションの布を何百枚と集めて番号をつけて……と、気の遠くなるような下準備が必要です。

下絵だけでもすばらしいのに、それを布を縫って、キルティングして作っていくわけですから、それはそれは果てしない時間を要する(大きな作品になればなるほど時間が必要)のです。
見ているのは楽しいけれど、これを”作る”という、自分が作ることを想像しながら見ると、ひゃあ~~~((+_+))と、作品を見るたびに、みんなで驚愕の声をあげていました。 

画材を使って描く、のではだめだったのでしょうか…。
なぜに布で…そしてなぜキルティングにこだわったのか。しかも、男性の方です。
いろいろな意味で興味を持ちました。 

そして、常設展のエロール・ル・カインの作品。これもすばらしかった!
上写真の左が、カインの絵本『魔術師キャッツ』。

カインはさまざまな画風の絵を巧みに描き分けました。 
 ――“イメージの魔術師”と称されたエロール・ル・カインの描くイラストレーションは、東洋美術と西洋美術、幻想性と写実性、繊細さと大胆さ、ともすると相反するかのような特徴をあわせもつ。
また細密に描かれたそれは装飾性が強く華麗、絢爛そのものである。と、説明されています。 

生まれは1941年、シンガポール。
11歳の時には8ミリカメラでアニメーションをつくるほど映画に夢中になり、15歳の時の作品が映画社の目にとまり単身イギリスへ渡ります。
以来、アニメーションの制作に携わりますが、1968年に映画用に描いたラフスケッチが元となり『アーサー王の剣』を出版。
絵本作家としての第一歩を踏み出し、その後、『いばらひめ』『おどる12人のおひめさま』『美女と野獣など48冊の絵本を出版。

1985年には『ハイワサのちいさかったころ』でケイト・グリーナウェイ賞を受賞し、イギリスを代表する絵本作家となりましたが、1989年、ガンのため47歳の若さで亡くなりました。 

エロール・ル・カインは、さくらももこさんが憧れた絵本作家だとも、説明にありました。新潮社の『憧れのまほうつかい』(1998年)は、さくらももこさんがカインのことを伝えたいと書いた本です。 

ももこさんは、高2の時、本屋さんの絵本コーナーでカインの『おどる12人のおひめさま』を見て、恋してしまったのだそうです。
あまりのすごさに、イラストレーターになるという自分の夢を諦めたと書いてありました。カインの弟子になりたいけど英語ができないのでそれも諦め、せめて会いたいと思っていたのですが、亡くなったと知ってショックだったそうです。 

日本ではそれほど知られていないカインのすばらしさを伝えたいと新潮社の人に話すと、カインの作品コレクターの渋谷氏を紹介してもらい、イギリスに行く渋谷氏についていくことになります。
カインに関わる人を紹介してもらって、ももこさんは通訳と一緒に会いに行き、そして『憧れのまほうつかい』を出版しました。  


 
この本に書かれている渋谷氏というのが、このえほんミュージアム清里を設立した方なのです。
カインへの思いを込めたカラーのイラストもたくさん掲載してあって、ももこさんらしいカインへの追悼本となっていますね。

この本のことは、この美術館で知って、清里から帰ってきて図書館から借りて読みました。本の出版から20年後、ももこさんもガンで亡くなったのだなあ……と思うと、とても切なくなります。
ももこさんは天国で、カインにきっと会えたでしょう。 

そういえば、新静岡駅そばに、ももこさんが寄贈した、ちびまる子ちゃんのマンホールがあるのです。
まだそれを見ていなかったことを思い出し、先日、静岡に行った時に、ももこさんを偲んできました。↓ 


私と一歳しか違わないももこさんの死はとてもショックです。
ご冥福を祈ります。 旅行記から話がだいぶそれてしまいました。

旅行記は、まだつづきます~。